The need for connection — to form and maintain at least a minimal number of positive, stable, intimate relationships — is a fundamental need that affects our whole being, permeating our entire suite of emotions, thoughts, and behaviours.
Scott Barry Kaufman, blogs.scientificamerican.com
“人とのつながり、つまり、少なくとも必要最小数のポジティブで安定した親しい関係を築きそれを保つこと、というのは人の基本的な必要であり、一連の感情・考え・行動に作用し、人の本質に影響を及ぼす。”
何の話かといいますと、人とのつながりは人間の基本的な必要であり、社会的な隔離を強制されることによって脳は飢餓状態と似た反応を示し、幸福度が低下するという話です。今まであまりなされてこなかった分野の研究らしいのですが、たった10時間の強制的な社会的隔離で、お腹を空かせた人が食べ物を渇望するように社会的ふれあいを渇望するようです。原文をお読みになりたい方は引用元のリンクからどうぞ。
今回の感染症の影響でStay Homeを強いられて、飢餓状態の人が食べ物を渇望するようにコミュニケーションを渇望した方は少なくないのではないかと思います。
わたしもその一人で、対面での意味深いコミュニケーションへの渇望を強く感じました。あと、なぜか無性にピアノを弾きたくなりました。全くの無関係なのかもしれませんが、コミュニケーションに対する渇望がそのような表現する欲求につながったのかなとも思いました。
それで今日はピアノや楽譜に関するお話です。
Zimmermanとの出会い
オーストラリアではピアノを所有していました。1988年製。旧東ドイツのZimmmerman(ツィンマーマン)というメーカー。今は世界3大ピアノブランドの一つ、ベヒシュタインの傘下にあります。他の2つはスタインウェイとベーゼンドルファーですが、どちらもグランドピアノを弾いたことがあります。
弾いたベーゼンドルファーは92鍵モデルで、当時ショパンのエチュードOp25-12(大洋)を練習していました。ピアノが置かれていた部屋が狭かったこともあり、響きがすごかった記憶があります。低音は鐘のような金属的な響きがありました。スタインウェイではおそらくバッハを弾いたと思うのですが、音に包まれる感と軽いタッチが印象的でした。弾いているだけで幸せになれる、そんなピアノでした。
さてそのツィンマーマンのアップライトですが、オーストラリアで2台目のピアノでした。1台目はオーストラリアのブランド。タッチや音に満足できず、買い換えるためにEbayで程度の良いピアノを探していました。もちろん程度の良いヨーロッパ製のピアノはなかなか出品されませんし、出品されてもすぐに売れてしまいます。珍しいものではショパンが愛奏したというフランスのブランド、プレイエルなども出品されていたこともありました。3〜4ヶ月ほど探したと思います。
出品されたばかりのそのツィンマーマンに一目惚れし、すぐに出品者と連絡を取り、次の日の朝にインスペクションに。出品者は成人した2人の娘を持つマレーシア人のご夫婦。今はシドニーに住む娘たちが弾いていたピアノとのことでした。試弾させてもらうと、調律はやや狂っているものの、きらきらとした深みのある音がピアノ全体から鳴りました。
夫は処分していたがっていましたが、妻はピアノに未練が残っています。「あなたがもしもこのピアノを売るときは必ずわたしに連絡してね」などと言ってきますw。破格すぎるそのピアノを横目に奥様が気を変えないことを祈りつつお二人と話をすすめ、出品者のパソコンでEbayにログインし、即決価格での購入となりました。Ebayのログインパスワードを覚えていてほんとによかったと思いました。
前のピアノが売れるまでピアノが2台あった我が家ですが、車の買い替えも同じように新しい車を購入後、古い車を売るという形をとっていました。場所は取りますが、買った後に売るという方法は、購入や売却で失敗するリスクが少なくオススメです。
ピアノの思い出
さて、そんな経緯で購入したツィンマーマンのアップライトですが、小さなボディからは信じられないくらいの豊かな響きがありました。音は非常にクリアできらきらしたイメージ。フレーム(鉄)が鳴るというよりは、ピアノのボティ(箱)全体が鳴っている感じです。高さわずか109cmなのに、国産の背の高いピアノよりよっぽど豊かな音がでます。心の琴線に触れる音、つまり弾いてるとニヤけるレベルの音ということになります。そしてピッチも驚くほど狂わず、調律してもそんなに変わらないというすぐれもの。
Made in Germanyのピアノを弾くと国産のピアノが弾けなくなったりします。(弾いても楽しくない)箱が鳴るのは使われている木が高品質だからと言われています。今ではヨーロッパでもそんな良い木は少なくなっているのだとか。
そんなピアノを設置していたのは、築100年ほどのレンガの家で、天井がものすごく高く、無垢フローリングの床だったので爆音が出ました。今思えばあの環境は最高でしたね。空間が広く、騒音に寛容な文化。普通に夜でも弾けるのはほんとうに贅沢なことなのだと感じます。年中乾燥しているので湿気対策も必要ないですしね。あとピアノの整調(Regulation:鍵盤とアクションの動きを整える作業)もある程度自分で挑戦してました。
弾いていた曲はというとクラシックではバッハが一番多かったですね。一番大好きな作曲家。弾いていて癒やされる。今後弾いてみたい曲は平均律第1巻の24番のプレリュード。
そんな贅沢な環境だったのですが、生活は結構忙しく、なかなかピアノを弾くまとまった時間も取れなかったので時々やっていたことがありました。
そのことは次回の記事に書きたいと思います。